マウント・レイニア

マウント・レイニア

氷と雪の斜面を横切る

8月19日の夕方、雪の斜面を横切りると、マウント・レイニアが遠望できる開けた稜線に出る。トレイルは2284.9で、ナイフエッジと呼ばれる頂を経由するルートと山腹の斜面を横切るルートに分かれる。先に歩いていたカップルがナイフエッジに行くルートを登っていた。私たちも続いてみたが、下から見るより登りはきつかったので、もどって山腹を横切るルートを行った。
山の斜面に線を引いたようなトレイルは、幅が狭く、端に足を置くとくずれてしまう。前にあるピラミッド型の稜線、足元は深い谷間、遠景はマウントレイニアと、ワシントンらしいゴージャスな風景であるが、楽しむ余裕はない。足を踏み外さないように慎重に歩く。

 

 

マイル2274 ナイフエッジ付近から見えたマウント・レーニア4392m

ナイフエッジへのルートの北側の分岐点に出ると風が強くなり、帽子が飛ばされないようにパックにしまう。先に行ったカップルが下りて来る頃だと見上げてみるが見えない。彼らは頂でオーバーナイトするのかも知れない。後で会った日本人ハイカーの宇部さんは、ここの頂でキャンプし、満天の星を楽しんだという。
この先は、ピラミッド型の稜線を上り下りが続く。トレイルの表面は砂と細かな石で滑りやすい。下りで周りの景色に気を取られていると足を滑らせてしまう。HIROが転んだので駆け寄ると、尻もちをついた記念に汚れたショートパンツを写真に撮れという。6時を過ぎた頃、ようやく細い尾根から降りて谷間への長い下りに入った。8月も後半に入り、尾根に雪はなかったが、もし雪が残っていればクランポンが必要だっただろう。

 

 

ピラミッド型の稜線を行く
ナイフエッジの頂を振り返る

 

 

 

 

 

 

 

 

長い下り坂の途中で一本のクリークを見つけて水をくむ。この辺りは広い河原のようなところで、テントは張れそうだが風が強い。風をさけるためトレイルの脇の林に目をやる。キャンプできそうな2か所あったが、すでにテントが張られていたり、ハイカーが何人もいたりした。さらに下るとバンカーのような草地の中のくぼみがあった。砂がやわらくてくいがきかなさそうなので、やめた。バンカーの上を見ると草地と林の境にスペースを見つける。先客がキャンプファイヤーをやったらしく、その灰に覆われた埃っぽいところだが、ほかになかった。風上は、林であるが、ときおり風が舞って、地面の灰を飛ばす。灰が舞ってテントの中に入らないように、灰が残っている土の上にテントを張る。このテントは軽量重視で雨には強いが風に弱い。普段使わないテントの張り綱も使い、周りの木や石に固定した。

マウント・レイニア ホワイトパスの南より
ホワイト・パスへのダウンヒル 遠景はマウント・レイニア

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホワイトパス 2303
8月20日 お昼前にマイル2296.5でマウントレイニアのビューポイントに出る。レイニア山は、標高4,392mでワシントン州で最も高い山だ。マウント・レイニア国立公園で、明日かあさってには公園に入る。午後、USハイウェイ12のホワイトパスに出る。ここから西に歩いて1キロでクラッカーバレルストアがある。私たちは、ストアでパッケージを受け取り、そのとなりのホテルに宿泊する。ホテルにランドリーはなく、ストアにあるコイン式の洗濯機を使う。店には、ピザなどのスナックが少しあったが、近くにレストランはない。夕食と朝食を仕入れ、パワーバーやワインなどを買った。

買い物をしていると、日本人ハイカーの宇部さんに会った。初めて会った日本人ハイカーだ。彼は、PCTだけでなく世界中に出かけると言っていた。宇部さんは、クラッカーバレルストアで一休みした後、荷物がパックウッドの郵便局に送ってあるからと、アメリカ人のハイカーと共に、ヒッチハイクをしにハイウェイに行った。

その後会ったのはスーパードレッシー。彼女と会うのは5度目で、今回は若い男性ハイカーと行動を共にしていた。

ストアが閉まる直前になると、店の女性主人があまったスナックはもっていっていいよと、気前よく言ってくれた。私たちも、最後に残ったタコスのようなサンドイッチをもらった。

初めて会った日本人ハイカー宇部さんと ホワイト・パスのクラッカーバレル・ストア

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホワイトパスのホテルは、スキーロッジのようで、部屋にキッチンがついているが、シャワー室は狭い。それにベッドが柔らかすぎて、翌朝腰が痛くなった。Hiroにマッサージをしてもらってから出発する。
21日は朝から霧で、今にも雨に変わりそうだった。高い木の下を通ると、幹の近くが濡れている。枝についた霧が水滴になって雨のように根元に落ちているのだ。その大きな木の森を抜けて峠道を登っていると、後ろから小柄な若い女性が追い越してきた。見覚えのある容姿は、私たちがずっと探していた、サウスターミナスで写真を撮ってくれた若い女性だった。彼女のトレイルネイムはティーハース。思いがけない再会にうれしくなり写真を撮る。午後になって天気は回復、夕方には青空が広がっていた。

ティーハースと再会
祖母と母に見送られて出発するティーハース 4月5日