タホ近郊

タホ パノラマ PCTを離れた北岸のタホ・リム・トレイルより

ホ近郊

ソノラ・パス~タホ湖
ソノラ・パスからタホ湖にかけて,所々に湖が見える高山地帯を歩く。7月の中旬頃までは,標高の高い所に雪が残り峠道を覆う。北側の斜面では,朝夕は凍って滑りやすくなるので,ハイキングポールを頼りに慎重に下る。日当たりのよい雪原では,足跡が消えてしまったり,いくつもの足跡が違う方向についていたりして道がわからなくなる。そんな時,頼りになるのがゴスホックの地図とGPSだ。迷った時に取り出すと10mほどの精度で現在地とトレイルの場所を教えてくれる。

ハイウェイ4のエビッツ・パスで待っていたのは,タホに住むトレイルエンジェルのチップモンク(トレイルネイム)さんだ。彼は,「今日が最終日だ」と5日間毎日ここに来ているという。先着の4~5人のハイカーが椅子に座り雑談をしていた。チップモンクさんは,チリを暖めて食パンにのせたものとフライドエッグ(目玉焼き)をごちそうしてくれた。

ハイウェイ4 エビッツ・パス(サウス・レイクタホ近郊)で待っていたトレイルエンジェルのチップモンクさん

ハイウェイ4と88の間の高原からきれいな湖がいくつも見えた。印象的だったのは,真っ青な湖面のアッパーとロウワーのブルー・レイクとロスト・レイク。自然の湖のように見えるが,よく見るとダム湖とか貯水湖と呼ばれる人口の湖だった。

お花畑の山の頂から見たブルーレイク ハイウェイ88の南で
ロスト・レイク

タホ・リム・トレイル

1081.9でタホ・リム・トレイル(TRT)と合流する。TRTは,全長264kmのタホ湖の外輪山を一周するハイキングコースで,タホ・シティへのジャンクションまでの52マイルをPCTと共有する。この区間,秀麗な湖が集中する南西部のデソリューション・ウィルダネスを通過するが,タホ湖の姿はほんの一部しか見えない。タホ湖の壮大な眺めは,湖の北部と東部の稜線を歩く区間で,天気に恵まれ山火事の影響がなければ,雪を抱いたはるかな稜線を背景にカリフォルニアブルーの真っ青な湖のパノラマが楽しめる。(TRTの詳細は,http://www.noriandhiro.comのTahoe Rim Trailで)

タホ湖南、TRTとの合流点

トレイルの脇で休んでいると,後ろからイヤホンを耳にあてたハイカーがやってきた。彼は,ハイウェイ50でヒッチハイクをしてサウス・レイク・タホへ行き,シャワーを浴びて洗濯をするという。私が,「ホステルへ泊まるのか」と聞くと,その日のうちにトレイルにもどると言っていた。タホ湖は,ネバダとの州境にあるカリフォルニア最大のリゾート地で,冬はスキー春から秋にかけてハイキングやキャンプ,夏はウォーター・スポーツと,年間を通して訪れる人は絶えない。サウス・レイク・タホは,タホ湖の周りで最大の都市で,50号線からヒッチハイクで12マイルの距離にある。ホステルはステートライン(ネバダとの州境)の近くで,その辺りは,ホテルやショッピングセンターなどが立ち並び,観光客であふれる。
50号線は,シエラ・ネバダを横切るハイウェイの中でも80号線に次ぐ幹線道路で,冬でも除雪して閉鎖しない。普段は車が猛スピードで通過するが,この日は7月2日。4日のジュライ・フォース(独立記念日)の週末で,タホへ向かう車は渋滞。ヒッチハイクをするには,車をつかまえやすいが,乗ってからかなり時間がかかりそうだった。
50号線から1.5マイル先にあるエコーシャレットは,エコー・レイクの売店。月曜日から金曜日の11時から2時まで開く小さな郵便局が,ハイカーの荷物を預かってくれる。小さな店だが,観光客だけでなく周辺の別荘地にくる人のために,いろいろな商品を扱い,充電のためのアウトレット(コンセント)も建物の外にある。

エコー・レイクとウォーター・タクシーのボート

エコー・レイクの桟橋にウォータータクシーの乗り場がある。15人乗りくらいの小さなボートがアッパー・エコー・レイクまで通っている。料金は14ドルで,片道2マイルをボートに乗れば,その分足を伸ばせるとディハイカーがよく使っている。
エコー・レイクを過ぎるとデソリューション・ウィルダネスの境界。「ここから先はパーミットが必要」という看板の前で立ち止まっているハイカーが「俺たちもパーミットがいるのか」と私に聞く。私は,「これは,オーバーナイト・ユーズ(キャンプ)のためで,ディハイクには必要ないさ。」と答えると,彼は再び歩き始めた。アメリカでは,国立公園や自然保護区で,細かなルールを設けているが,彼らは規則に従い自然を大切にすることに誇りを感じている。

デソリューション・ウィルダネスは,タホ南西部にあり、花崗岩の山々と森、その中にある湖の美しさが魅力の自然保護区で,オーバーナイトやディハイクにたくさんの人が訪れる。PCTで最初に巡るレイク・アロファは,ピラミッド・ピーク3042mやマウント・プライス3003mなどの雪を抱いた山を背景に,湖面の中央に小島が浮かべたここで一番大きな湖。広い湖岸の岩の間にはいくつも平らな場所があり、湖を眺める絶好のテントサイトになっている。

レイク・アロファ

ヘザー・レイクとスージー・レイクを過ぎると,ディックス・パス2852mへの登りが始まる。峠へのスイッチバック(つづら折れの道)を登ると谷間にスージー・レイクが小さく見える。その少し上,二つの山すその間に小さく見えるのがレイク・アロファ。さらに登るとハーフムーン・レイクが下の谷間に姿を見せる。稜線に出ると北側の視界が開け,真下に見えるのがディックス・レイク,その向こうは、フォンタニリス・レイクだ。

マイル1105.3 ディックス・パス2857m付近から見たディックス・レイク
ディックス・パス 2857m

7月の初め,峠の頂は雪に覆われ,風が冷たいので、写真を撮っただけで下り始める。ここを通るのは3度目なので、トレイルが雪に覆われていても、デイックス・レイクに向かってスイッチバックで下ることは大体わかるが、足跡は、稜線をまっすぐ下るようについている。GPSで確認したら、私の記憶が正しく、足跡のない方へ進む。急な雪の斜面で何度も足を滑らせながら下ると,湖の近くになってトレイルを発見。ようやく安心するが、足跡の通りにまっすぐ行けばかなり遠回りになっただろう。
「ベイ・ビュー」というトレイル・ジャンクションがあった。エメラルド・ベイという湾を見下ろせるポイントだ。そこに重石をされた紙切れがあった。読むと雪の中でサングラスを無くし,見つけたら連絡してほしいというPCTハイカーのメッセージだった。数マイル先でサングラスをなくした本人たちに会った時、私は、「読んだよ。たくさんの人が峠に行くからすぐに見つかるよ」と声をかけた。数日前に雪の上で手袋を片方なくした私も人ごとではなく、雪の中で何度も転んだら何かを無くしても不思議でない。

バーカー・パス1127.1

この日は、スージー・レイクを朝出て夕方バーカー・パスに着いた。バーカー・パスは,トレイルと林道の交差する峠で,タホ・リム・トレイルのトレイルヘッドでもある。駐車場にはトイレがあり、テントを張れるスペースもある。私の姿を見ると,ピクニックテーブルにいた女性が手を振って招き入れ,飲み物やドーナッツをごちそうしてくれた。彼女は,PCTハイカーのフィアンセとここで待ち合わせをしている。彼女は、午前7時にエコー・レイクを出るという電話をフィアンセからもらったそうだ。エコー・レイクからここまで33マイルある。「ロングウェイだね。」と言うと,彼は1日35マイル歩くそうだ。朝6時半にスージー・レイクを出て,11時間で23マイルしか歩いていない私と比べるとかなりすごい。その彼は,夜8時を過ぎて到着した。

レイク・タホ

翌日,バーカー・パスから5マイル歩いてタホ・リム・トレイル(TRT)と別れるジャンクションを通過する。TRTは,タホ湖に向かって下り,タホ・シティを通って再び山に登る。PCTは,1960年に冬季オリンピックの会場となったスコー・バレーなどのいつかのスキー場を通り,タホ湖から離れていく。時折,山の間からタホ湖の一部が見える。PCTからタホ湖がよく見えないのは残念だ。タホ湖の全容の眺めは,TRTのハイウェイ267のブロックウェイ・サミットTH(トレイルヘッド)から5マイル北に登ったマーティス・ピーク2656m付近からがベストである。また,タホ湖東岸の50号線スプーナー・サミットTHから南へ5マイルのサウスキャンプ・ピークからの眺望もすばらしい。TRTの詳細は,http://www.noriandhiro.comのTahoe Rim Trailで

タホ湖遠望 バーカー・パス付近から
タホ湖 北岸のローズノブ・ピーク2939m付近のタホ・リム・トレイルから
サウスキャンプピーク(東岸)からのタホ湖 タホ・リム・トレイルより